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ジョン・レノン『シェイヴド・フィッシュ』

昨晩。
仕事のストレスが溜まっているせいか、ひさしぶりに心理的にやばい状態になる。 処方してもらってるクスリを服用しているのに不安感をコントロール出来ない。過去のいやな記憶がつぎからつぎへとわき上がってきて、 胸に焼け火箸を押しつけられているような気分に襲われる。それでも、こういうときは家族と会うのを避け、 睡眠をたっぷりとれば回復するとわかっている。灯りをつけたままベッドにもぐりこみ、ごく小さい音量でジョン・レノンをぼんやりと聴く。 『シェイヴド・フィッシュ』。

ジョン・レノンを聴くなんて何年ぶりだろう...というより、どうして聴きたくなったのだろう。 『シェイヴド・フィッシュ』は、レノン存命中にリリースされた唯一のベストアルバムである。 「愛と平和のジョン・レノンも結構だが、狂気とロックンロールのジョン・レノンがもっと知られていい」といったのはロッキン・オンで執筆活動を続けている松村雄策さんだが、 このアルバムは「愛と平和のジョン・レノン」への偏向が無いので、とても愉しめる。

「コールド・ターキー」。最高である。

ローリング・ストーンズの「無情の世界」は傑作だが、ヴェルディやモーツアルトがすでにおなじものを書いていたかも知れない。 けれど「コールド・ターキー」は、ジョン・レノンにしか書けなかったというのは当然として、 ロックンロールだけが唯一到達できた境地という意味でもすごいもんだなあと、思う。 曲の後半の有名なスクリーミングは、「愛と平和のジョン・レノン」しか聴いたことがない方々には信じられない世界だろう。 一見支離滅裂に聞こえるあんな声が、何度聴いても飽きないし新鮮なのはなぜか。それは、美しいから...そのひと言に尽きる。
美しいというと誤解を招きそうだが(コールド・ターキーとは、薬物依存症患者の禁断症状のことを指すスラング)、 ジョン・レノンというひとはもがき苦しめば苦しむほど、無垢になっていく人だったような気がする。ジョン・レノンの狂気に、 暴力や悪徳の匂いは無い。新生児のような無垢を感じさせる狂気なのである。

聴いていたときには忘れていたが、今日(木曜日)は彼の命日である。日本では12月8日。現地では7日...。 何年かぶりで聴いたその日が命日の前日だなんて...。まあ、たんなる偶然でしょうけど。

そういえば彼が射殺されたというニュースを、ぼくは大学一年の時、下宿の部屋のラジオで聞いたのだった。 NHKの夜のニュース、「元ビートルズのジョン・レノンが...」ぼくはそのあとに 「多くのファンに迎えられ成田に到着しました」という言葉が続くものだと思っていた。 ソロになり、ほとんどライブをしたことのなかったジョン・レノンは、日本を皮切りにツアーを行なうと発表していたからだ。 それがまさかまさか...だったのである。

『シェイヴド・フィッシュ』は1975年にリリースされたアルバムで、収録曲も少ないが、とてもいいアルバムだと思う。 『ジョンの魂』と『イマジン』とあわせて、この世に生まれた以上聴いておいて損はない音楽としておすすめします。

もうひとつ、1974年の『ウオール・アンド・ブリッジ』も大好き。
スリーヴデザインには、彼が子どもの頃に描いた絵がそのまま使われているのだけれど、内側にすごい絵がある。 銃を構えて馬に乗っているインディアンの絵なのだけれど、アングルがとても変。松村雄策さんも書いていたが、子どもが動物を描くときは、 ほとんどの場合真横から見た姿になるはず。しかしジョン・レノン少年はなんと、正面から馬が突き進んでくるようなアングルで描いている。 銃口をわれわれに向けているインディアンはちょっと怖い。さらに絵をよく見ると、インディアンを乗せた馬は、目がひとつしかない。 顔の真ん中にたったひとつである。

ジョン・レノンとは、そういうひとだったのである。

by thatness | 2005-12-08 00:16 | 音楽_rock,others
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