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雲井雅人サックス四重奏団を聴く

24日。地元の音楽ホール。
サックス四重奏団のコンサートに行った。ソプラニーノ、アルト、テナー、バリトンの4管のアンサンブル。 といってもジャズではありません。クラシックです。

サックスとは、いまから160年ほど前、ベルギーのサックスさんという方が発明した楽器なのだとか(...知りませんでした)。 クラシックのオーケストラのために拵えられた楽器なのだろうけど、実は本家本元ではあまり普及していない。 もっぱらポピュラー・ミュージックで活躍している。

サックス四重奏というのがクラシックにあるというのは知っていたけれど、どんな曲があってどんなサウンドなのか、 見当もつかなかった。 チケットが安かったというのもあったけど、好奇心をおさえられなくて足を運んでしまったのである。

ステージに4人の演奏家が登場したとき、最初にまず、楽器の美しさに目を奪われてしまった。 柔らかい曲線の管と複雑な弁が、照明を浴びてきらきらと光り輝いている。まさに「金管」である。 しかも、意外と大きい。サックスの形状はこういうもんだと知ってはいたけれど、目の当たりにすると迫力があった。 存在感のある楽器なのである。

響きは素晴らしかった。ぶあつく、柔らかい。

実はわが町の音楽ホール(中ホール)は全国的にみてもトップクラスの音響を誇る、とぼくは思う。 (その証拠に、昨年はアルバン・ベルグ・カルテットがここでリサイタルを開いた) そのホールが、歌うように朗々と鳴る...。 弦楽四重奏のサウンドが、空から舞い散るような雪だとすれば、サックス四重奏は地鳴りのようでもあり、外洋の大波のようでもある。

同時に、繊細で知的な表現もできるのが面白い。管一本だとシンプルな音しか出せないけれど、 4本だと弦楽四重奏と構成は同じ。各々の声部の分離がいいので、バッハの『フーガの技法』なども演奏可能なのではないか。 (体力的に全曲は無理でしょうけど)

さて、その日のプログラム。サックスのために書かれた曲というのがなかなかないので、 どうしても編曲ものがプログラムの大半を占める。ビゼーの『カルメン』からの抜粋、 ドボルザークの弦楽四重奏曲「アメリカ」の第1楽章、ガーシュインの『ラプソディー・イン・ブルー』など。 ベルギーからフランスの軍楽隊を経由してアメリカで普及したという(...知りませんでした)、 サックスの歴史性を念頭においた構成だろうか。そんな理屈をこねなくとも、 とにかく楽しい演奏。隣に座っていた初老の男性などは、扇子を指揮棒代わりに振り回して楽しんでいた(....ちょっと、迷惑でしたよ)。

いちばん感動したのは、バッハの「G線上のアリア」。

この曲のイメージは、ヴァイオリンの独奏を聴いても、原曲の小オーケストラで聴いても、 センチメンタルな印象しか持たなかった。他のバッハの作品とくらべると明らかに見劣りがするし、 精神性の低い世俗曲だと決めつけていた。
ところがサックスで聴くとどうだ。まるでオルガンで聴く教会コラールなのである。 敬虔なプロテスタントだった、バッハの祈りが聞こえてくるではないか。これにはやられた。 身を乗り出して聴く。目からウロコであった。

よくよく考えてみると、サックスもパイプオルガンも、空気が金管を抜けるわけだし、音を出す構造は同じである。 というか、人の息で直接音を出すサックスのほうが、より繊細な表現ができるのかも知れない。 見知った楽器から、見知らぬサウンドが流れてくる。新鮮な体験であった。

サックスという楽器は、面白いものだなと思う。
たった4人の息、横隔膜のコントロールでこれだけの音量、繊細な表現である。 人間には声という素晴らしい楽器も備わっているけれど、サックスもまたそれに見劣りしない表現力を持っている。 無色透明で、ふだんは意識しない空気に、 音楽という方法で色彩をあたえデザインするのがサックスだと思った。 音楽の力で、空気が見えるのである。

そういえば、管楽器のことを、英語では「wind insturument」という。見えない空気を感じさせる力として、 サックスはまさに風でした。
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by thatness | 2004-08-26 15:18 | 音楽_classic
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